2013年8月22日木曜日

富山空港の「ローカライザー休止」について考える - これはイロイロ大変ですぞぉ…

10月16日のANA885/887便がRNAV(GNSS) Approachを実施しました(10/16)(ブログレポート)
ANAのRNP-APCH取得機体に関する記載を加筆しました(10/10)
RNP-APCHに関する記載を加筆しました(9/28)


※休止後の様子はこちらのブログ記事(9/26)をご参照ください


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「9/19から11/13まで、富山ILS(ITO)を休止します」

富山ILSとは、富山空港の「ローカライザー」「T-DME」の事(富山にはグライドスロープは設置されていないので…)。

ローカライザーとは、滑走路への進入方向を示す電波を送出している装置。航空機はこの電波を受信して、滑走路方向への“左右のズレ”を知ることができます。

この設備を工事するので休止すると航空路誌補足版(22 AUG)で発表がありました。
(機器更新のようですよ)


展望デッキよりローカライザーを見る
(滑走路脇に設置された“オフセットローカライザー”)

手前の赤い柵みたいなのがローカライザーのアンテナ
後ろの箱の上に突き出た、赤く長い棒がT-DMEのアンテナ

(この記事の為、18日のJALチャーター到着前にローカライザーの写真を黙々と撮影…)


お断り
以下について情報が誤っている可能性が十分にあります。
また、この情報を実飛行に使ったりしないでください(いないと思うけど念のため…)



これは富山空港において以下のアプローチ方式
  • LOC Z RYW 20 (ほとんどの定期便がこの方式で着陸)
  • LOC Y RWY 20 (これは最近滅多に使われないケド…)
が使えないという事態。これ、結構大変です…


広ーい空港ですと代替のローカライザーが設置されたりするのですが、富山空港ではスぺースの関係からか代替を準備せずに休止されます。
(そもそも、富山空港のローカライザーはオフセットなだけでなく、万が一の洪水に備えて移動することができるというちょっと特殊なローカライザーなんです)

そーいやサンフランシスコ空港でアシアナ機が墜落した事故のときも、当該滑走路のILSは休止中…


となると、まずはあの「VOR-Aアプローチ」の登場です!

この動画は、以前富山空港で行われたVOR-Aアプローチの様子です。


富山市街の上空を横切って、滑走路に向かってきましたね。

これはローカライザーを使用せずに富山VOR/DME(TOE)のみを使用してアプローチする方法。

VOR-Aのチャート(みほん)

  1. 富山VOR/DME(TOE)の上空へ向かって飛行(通常、OYABE ARRIVALを使用)
  2. TOE6000ft以上で通過(ここからVOR-Aアプローチ開始)
  3. 富山湾へ向かい降下(019°)
  4. 折り返して再びTOEへ向かう(215°) ※上記動画はここから収録
  5. 滑走路を確認し、着陸
LOC Y RWY 20とコースは似ていますが、最終進入は北北東から行われますので、ファイナルで滑走路を確認したのち、滑走路方向へ向けて左旋回が行われます。(この瞬間がちょっとカッコいい!)

富山空港の北側・滑走路脇に設置されている富山VOR/DME(TOE)


そして富山ILSの休止と共に発表されたのが「標準計器到着方式(STAR)」の一時設定。

「VOR-Aアプローチ」の開始点は富山VOR/DME(TOE)であることから、基本的に「OYABE ARRIVAL」しか使うことができません。
(エンルートからいきなり開始した787もあったケド…)

そのため、いつも使用されている「TOYAMA ARRIVAL」「OHANA ARRIVAL」をTOEまで延伸したSTARとして、それぞれ「RAICHO ARRIVAL」「HIMI ARRIVAL」が設定されました。TOEまで6000ft avobeですね。

※TOYAMA ARRIVALは主に東京便や西方から飛来の国際線、OHANA ARRIVAL」は主に札幌便が使用。OYABE ARRIVALは西方からの国際線が時々使用。

左:TOYAMA/OHANA/OYABEの各アライバル
右:今回新たに一時設定されたRAICHO/HIMIの各アライバル

一時設定されたものは、TOE(6000ft以上)まで延伸されている
これによりVOR-Aの開始点まで繋がった



でもこの「VOR-Aアプローチ」には難点が。それは要求される視程条件が厳しいこと。

ANAの767や787が使用する「カテゴリーD」で、LOC方式ならCMV 1400mなのですが、VOR-AではVIS 3200mと記載が。またMDA(最低降下高度)630ftと、LOC Zのそれと比べて160ftも高くなります。

ちょっと強く雨が降ったり、“もや”が出たりすると、METARで通報される視程が3200mを下回っていると降りられない可能性も(汗)。雲の高さも影響しますね。
(アプローチの可否については会社ごとにミニマム値があるようですが…)



でも諦めるのはまだ早い!
富山には「RNAV(GNSS) RWY 20 アプローチ」もあるじゃないか!

これだとCMVやDA(MDA)の値も、LOC方式と同じですネ!
「標準計器到着方式(STAR)」もTOYAMA ARRIVALとOHANA ARRIVALがいままでどおり使えます♪


しかーし!レーダー進入管制のある小松空港で実施されている「RNAV RWY 24アプローチ」とは異なり、こちら富山空港はノンレーダー空港。
そのためRNAVチャートには「RNP0.3 required」との航法精度が指定されています。

(この辺からがややこしい…)

富山空港のRNAV(GNSS)チャートにはRNP0.3の文字…

この航法精度が指定されたRNAV(GNSS)で飛ぶには、機体に対応機器の搭載とその認証が必要なようで、おそらく「RNP-APCH」の認証が必要なのではないかと思われます。

(調布飛行場・新島・神津島でIFRが開始されたが、このチャートにも「RNP0.3 required」の記載あり。そして新中央航空の機体は「RNP-APCH Approved」となった)

しかしながら、JASMAの資料を確認すると、富山空港に飛来するほぼすべての国内線機種でこのRNAVに必要なRNP-APCHの認証を取得していないのです(8月2日現在)。

なお、富山空港では海外のエアラインがよく「RNAV(GNSS)」を使用して降りてきますが、これは母国の航空局による認証を取得しているので日本国内の空港でも実施できます。
一方、ANAとエアドゥがこの「RNAV(GNSS)」を富山空港で利用しているのは今まで聞いたことがありません。


(9月29日追記)
この件について先日の羽田空港空の日において、チェックスター付近にいらした詳しい方(お察しください)に確認したところ、日本におけるRNP-APCH認証にはSBAS(MSAS)の搭載が必要との事でした。
また、多くの国内航空会社の機体が資格取得していないのは、各就航空港の平均的な気象条件やそれに対する各アプローチの視程条件などを考慮、さらに認定取得にかかる機体の証明や乗員訓練のコストを計算、その結果「RNAV(GNSS)アプローチ※RNP0.3 required」に必要な運航資格を取得しなくてもそれほど影響ないとみている可能性もあるのではないか、との事でした。
(10月10日追記)
10月9日に更新されたJASMAの資料を見ると、ANAが保有する多くの機種・機体で
「RNP-APCH Approved」となりました。
(10月16日追記)
10月16日のANA885/887便がRNAV(GNSS) Approachを実施しました。 



さあ、どうするどうなる富山空港。

整理すると、ローカライザー休止中の定期便の着陸進入方法としては、以下の3つが考えられます。
  • VOR-Aアプローチを使用
  • RNAV(GNSS)アプローチを使用
  • IFRをキャンセルしてVFRで飛行・着陸
    (富山空港はノンレーダー空港のため、IFR下での「VISUAL Approach」は実施できません)

外国航空会社はRNAVを主に使用してくるかと。この場合、ローカライザー休止の影響は全くありません。

ANAやエアドゥも、日頃から富山空港に着陸しているパイロットであれば、滑走路が視認できた段階でIFRをキャンセルし、VFRでの飛行・着陸を行うものと思われます。
(休止期間中、この方法が一番多く実施されると思われますが果たして…)

そして、ANAとエアドゥがRNAV(GNSS)を利用できないとなると、万が一気象条件が悪い日には海外からの定期便は着陸できて、国内のエアラインは欠航または引き返しなんて事態も起こりかねません。

「ANA883便は富山空港周辺の視界不良のため欠航となりました。なお後続のアシアナ航空はただ今到着、続くエアドゥは欠航が決定、上海航空は問題なく到着予定です。」

こんなアナウンス、お客は納得できますかね…

約2か月の間、「ローカライザーさえあれば…」なんて天候にならないといいんですが…


地上にいる我々が楽しむ(?)方法もありますよ。

ボーイング787や737NG、一部のトリプルセブン(JA741A以降)などの機種はADS-B対応ですので、Flightradar24で航跡が確認できます。
VOR-Aを使用する場合、ちょっと変わった面白い航跡になると思いますよ。

いっそ富山到着便に乗って「いつもと違う景色を楽しむ」というのもいいですネ。


この件については引き続きレポートをしていきます。
以上、ローカライザー休止について考えてみました。

※休止後の様子はこちらのブログ記事(9/26)をご参照ください
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